2013年04月19日

「乱歩賞と占星術殺人事件」

「乱歩賞と占星術殺人事件+福ミスの宣伝」
興味の無い方はスルーしていただいてOKです。

「占星術殺人事件」(1981年)は今更説明不要の本格ミステリである。
わたしが大好きな最高の本格ミステリです。
社会派推理全盛時代に本作を乱歩賞に投じた島田荘司の本格ミステリの最高傑作だ。



これも今更ですが、
1980年の第26回江戸川乱歩賞の最後の5作品に残った(惜しくも受賞できなかった作品)です。
この時の受賞作品は伊沢元彦さんの「猿丸幻視考」です。
これはわたしも購入して読みました。
歴史ミステリーとして面白く読ませていただきました。
「猿丸幻視考」の本はもう手元にないので選評を読めないの
が残念です。

さて以前、福ミス(興味のある方は『福ミス』でググッてください)から封書が届きました。
その中に興味深いコピーが入っておりました。

『2010年度 山村教室開校式 島田荘司先生ご講演』の題名で合計12枚(両面コピー)

山村正夫記念小説講座の、2010年開校式に島田先生が招かれ講演、質疑応答をされた内容です。

先生の本格ミステリに対する考え方を深く掘り下げてお話をされています。

ミステリ作家を目指す方でなくとも一読の価値があります。
塾長は森村誠一先生。
朧気に聞いていましたが、

森村先生と島田先生から直に『乱歩賞と占星術のマジック』のいきさつを、書いたものであれ、聞く(読む)のは初めてでした。

以下引用

島田先生

『私は占星術殺人事件を書いてデビューするんです。先ほど申しましたが、当時の文壇はまるで警察みたいになっていて、乱歩さん的な作品が出てくるのを、強く警戒していたわけです。
そこへたまたま私は、まるでその警戒心のど真ん中に投げ込むような作品を書いてしまったわけです。
ー中略ー私の占星術は、非難轟々の嵐を巻き起こしたわけです』
『江戸川乱歩賞に投じたのですが、乱歩賞なのだから、乱歩さん的な世界を書けば賞が獲りやすくなるのでは、と単純に考えたのですね。
ところが状況はまことにアクロバティックで、乱歩さんの名を使うが、乱歩を連想させる作風だけは、
問答無用に足きり的排除の対称になっていたわけです。少なくとも彼らにはそう見えた。
フィールドの対応は異様に冷たく、真面目な人だったら、もしかしたらあそこでつぶれていたかもしれません。
まあ私だって危ないものでしたが。

『江戸川乱歩賞に投じたのですが、乱歩賞なのだから、乱歩さん的な世界を書けば賞が獲りやすくなるのでは』
これは、素人のわたしでもそう考えます。
わたしは『猿丸幻視考』以降に読んだ乱歩賞受賞作は、
29回目に受賞した『写楽殺人事件』と
31回受賞作『モーツァルトは子守唄を歌わない』のみでそれ以降ありません。

乱歩賞はいつも気にかけていましたが、興味の沸く作品は皆無。
本格は皆無の状態で・・・・・
『乱歩賞』が泣くというより『乱歩』が泣きますよね。

『これが世に言う「清張の呪縛」で、乱歩さんの見世物小屋趣味の通俗性から、
清張さんが自然主義文学の手法をジャンルに採り入れ、推理小説の進歩向上を果たしてくれた、
という理解が常識になって文壇を覆っていて、私の「占星術殺人事件」は、ジャンルを乱歩流の通俗に戻す悪、という理解がなされたわけです。
また乱歩が息を吹き返しては大変だ、というわけです。

そんな時に森村先生が「小説現代」のコラム記事で、ほとんど絶賛的に「占星術ー」をほめてくださった。
これは嬉しかったですね。これがなければ、その後の私は違ったかも知れない、とそう思うくらいに、当時のフィールドは人情厳しく、私は四面楚歌の中にいたのです。
まぁ唯一、大学のミステリー研究会が評価してはくれましたが、文壇のプロフェッショナルたちからは酷評もいいところで、これは行儀意識、連帯意識から、一致団結、
そう決めてしまったというふうでした。
その中で唯一人、森村誠一先生だけが褒めてくださったのです。その時、あれだけの地位と名声を築いていらっしゃる方だから、逆に解ってくださるのだなぁと思いました。嬉しくて、森村先生にお礼のお手紙を書いたのですね。
そうしたら、葉書でお返事をくださったのです。その文面、今でも憶えていますよ。
「小説は、作家が歌う歌だと思うのです。私はあなたの歌が好きなのです」と。


森村先生
『私が「占星術殺人事件」を読んだ頃は、今で言えば宮部みゆきとか、伊坂幸太郎のようなポジションにいましたね。上り坂で、何を書いても売れるという時期。
慢心していたとも思えますね。
そういう時に「占星術殺人事件」を突きつけられて、「これが本格ミステリーだ」と思い、一週間くらい書けなくなりましたよ。いや本当に。これだけ緻密に凝っていて、論理的で、最後に鮮やかな展開で解決がある「占星術殺人事件」を読む前は、書き流していましたね。

ー中略ー

それを読んで書けなくなって、その感激のまま、「小説現代」にコラムを書いたのですよ。

島田荘司の「占星術殺人事件」を入選させない江戸川乱歩賞なんて、設定する意味がない。
この作品を見逃しておいて、何のための江戸川乱歩賞だ、というようなことを書いて、乱歩賞の選考委員が非常に怒ったという経緯がありますね(苦笑)
そして私は「占星術殺人事件」のおかげで立ち直れたのですね。

ー後略ー


島田先生
『今も、これから先も、私は上から目線でものを言ったり、威張ったりすることはありません。
みなさんの中に、あのころの私のように、不安いっぱいで、自分がどへ行くのかも解らないが、強い創作の衝動だけはもてあますほどにあるという人、そしてついに、これが活字になって世に出なければ間違いだと思えるような作品、あの頃の私の「占星術殺人事件」のようなものが書けた人は、是非、私とか、森村先生に見せて欲しい。

その作品が世に出るべきだと私たちにも思えたならば、その人が無名だろうが、五歳だろうが、八十歳だろうが、関係ない。その作品を世に出すために全力を挙げます。これは、お約束します。
ー中略ー

その作に自信があるならば、応募してもらうのもいいが、
もしも落ちそうだと不安を感じるなら、直接見せてください。いいですか?待っていますよ。』

記述は乱歩賞の箇所だけを抜き出して書きましたが、

作家を目指す方(ミステリだけではなく)は読まれたほうが良いと思います。
参考になる話がちりばめられています。
ウィキペディアで乱歩賞を見ると、落選した有名な著作が載っておりますが、むしろそちらの方に傑作が多いと思うのはわたしだけか?

あと、乱歩賞の他に人名を冠にしたミステリ賞がたくさんあります。
横溝正史ミステリ大賞、鮎川哲也賞等がありますが、
鮎川哲也賞も最近は広義のミステリーになりつつあるそうです。

人名を冠にしたミステリ賞は島田荘司先生以外全て亡くなられており、人名を冠した人の目指したものと違う方向に行こうとしている(行ってしまっている)
中央の出版社が行う賞ではなく、地方の賞ではあるが、

島田先生の「福ミス」は先生の本道を離れない唯一の本格ミステリの賞である。
選者もゴッド・オブ・ミステリーの島田先生お一人、最終候補に残れば必ず読んでいただける。

素敵な本格を書いて、わたしたち本格マニアの心をときめかせてください。
ぎゃふんと云わせてください。        



                TOSHI



















  

Posted by 黒江の町並み景観づくり at 18:14Comments(0)推理小説